<河村常雄の家元探訪>朝丘 雪路 [舞台と伝統芸]

若い人も日本舞踊に入りやすく

 日本舞踊・深水流家元の深水美智雪、すなわち歌手で女優の朝丘雪路は、昭和50年代に入ると日本画家だった父・伊東深水の名前にちなんだ舞踊リサイタル深水会を開いていた。

 56年に宇崎竜童のロックで踊った「曽根崎心中」が文化庁芸術祭賞大衆芸能部門の優秀賞を受賞。これが弾みとなって名古屋で舞踊教室を開くようになり、やがて東京での弟子も増える。60年に歌舞伎座で「深水流御披露目舞踊会」を開催するに至った。この舞踊会を深水流創流の起点としている。

――宇崎竜童さんのロックの「曽根崎心中」を使って踊ったのは。

 「ロックであろうとクラシックのシンフォニーであろうと、日本舞踊で踊れると思っていました。気持ちが入っていれば踊れると信じていたんです。私も歌手ですから。そして竜童さんの曲を踊り、しびれました。歌舞伎にもなっている題材をロックで踊ることができる。ものすごくうれしかったですね。日本舞踊をロックで踊るなんてと、批判的に見ていた方もいるかもしれませんが、私はワクワクしながら踊ったんですよ」

――そのころから深水流を興そうとしたのですか。

 「私はお師匠さんになろうと思ったことはなかった。弟子として、踊っていたかった。でもどうして家元になったかと聞かれると、踊りが好きだからと答えるでしょうね。流派なんて難しいことではなく、深水流と簡単にいっていろんなことができればいいなと思って始めたんです」

――初心者には稽古の前にロックで基礎舞踊をさせるそうですが。

 「チントンシャンから入ると、今の若い人は逃げ腰になる。ここは、日本のものなのに、と怒らないでロックで始めます。前とは生活が違いますから」

――月謝の額は東京、大阪など全国5か所の稽古場で統一し、時間が不規則になるタレントさんには切符制にするなどの制度を取り入れていますね。

 「若いお勤めの方が習いやすくするには、俳優志望の方にも日本舞踊を身につけていただくには、そして今のご時世、発表会に出やすくするにはどうすればいいか、周りの皆さんのお知恵を拝借しています」

――今年9月11日(日)には、東京・国立劇場大劇場で「創流二十五周年 第十三回深水流舞踊の会」を開きますね。

 「これまで歌舞伎座で開いてきました。昨年、25周年だったのですが、建て替えになりましたので今年、国立劇場で開くことにしました。本当は、東日本大震災で被災された方のことを思うと、開催はどうかなと思ったのですが、だからやろうよ、と決めたのです」

――デヴィ・スカルノ、深水雪志乃(五十嵐めぐみ)ら門弟約30人のほか、昼の部に幼なじみの花柳流家元・花柳壽輔、夜の部は歌舞伎の坂東玉三郎が特別出演する豪華版ですね。


 「大好きな芳次郎(現・壽輔)先生や詰め襟を着ていた学生時代から知っている玉三郎さんが快く出演してくださることになりました。私は大和楽の『あやめ』を踊らせていただきます。ハートが温まるような優しい曲です」

――この会をどのような会にできればと思っていますか。

 「今回は大震災のこともあって運営は大変。出演される皆さんも、大変な中で出てくれるのです。でもね、舞台に出て拍手をもらうとエネルギーになります。嫌なことが忘れられる、皆が元気になれる会にしたいですね」

――ありがとうございました。

 (写真は「粟餅」を踊る朝丘雪路)=「家元探訪」シリーズは今回で終了します。

(2011年7月27日 読売新聞)

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