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放出セシウム微減 福島第一原発の2号機 [社会]

東京電力は18日、福島第一原子力発電所の2号機原子炉建屋上部で空気中に含まれる放射性物質を調べたところ、半月前に比べ濃度が1けた程度下がったと発表した。原子炉の温度が下がったためとみられる。

 調べたのは、放射性物質のセシウム134と同137の濃度。17日に2号機原子炉建屋上部で穴が開いた場所で調べたところ、空気中の濃度限度の約0.03~0.01倍だった。前回8月29日時点では約0.75~0.33倍だった。

 東電によると、原子炉内にあるセシウムは温度が下がると水に溶けにくくなり、蒸気とともに外部に放出される量が減る可能性がある。東電が原子炉の「冷温停止」の前提として重視する原子炉圧力容器下部の温度は前回調査時より0.2度の低下にとどまるが、別の格納容器内の温度観測点で12度下がった部分があるなど、東電は「総合的に低下傾向にある」と説明している。


新宿で「桂米朝展」 [舞台と伝統芸]

上方落語の大御所で人間国宝の桂米朝の歩みを振り返る展覧会「桂米朝展」が、新宿の紀伊国屋画廊で8月2日まで開かれている。

 会場には、文化勲章や作家の正岡容が米朝にあてて書いた新作落語の直筆原稿、米朝が仕事を事細かく記録したノートのほか、放送局の出演料の袋も含め、230点余りを展示中。会場を訪れた息子の米団治=写真=も「自分の父親ながらすごい落語家だと思った」と語っていた。

(2011年7月25日 読売新聞)

「古典落語名演集」完結 [舞台と伝統芸]

「昭和の名人 古典落語名演集」(キングレコード)の30タイトルが発売され、全100タイトルのCDシリーズが完結した。

 志ん生、円生、五代目小さんら昭和の落語界を先導した名人たちから小三治、円窓まで、18人の十八番を網羅的に集めている。

 タイトル数が一番多いのは志ん生の23。三遊亭円朝作の長編人情噺(ばなし)「業平文治」の通し(NHKラジオで1957年に放送)=写真=などを収める。次いで多いのが円生で14、小さんは13。

 三代目桂三木助の「芝浜」、三代目三遊亭金馬の「藪(やぶ)入り」といった名演から、古今亭今輔の新作落語「青空お婆(ばあ)さん」「お婆さん三代姿」まで、バラエティーに富んだ作品が並び、初心者からマニアまで幅広く楽しめそうな内容だ。各2000円(税込み)。(電)03・3945・2123。

(2011年7月25日 読売新聞)

初代吉右衛門の業績回顧…早大演劇博物館 [舞台と伝統芸]

歌舞伎俳優の初代中村吉右衛門(1886~1954)の業績を振り返る展覧会が、8月7日まで東京・早稲田大学演劇博物館で開催されている=写真=。

 当代吉右衛門が人間国宝に認定される偶然が重なる中での展覧会。自らの収蔵品も提供した児玉竜一・早大教授は、「今の二代目が、初代が歩んだ道を目指していることが分かるのではないか」と狙いを語る。

 名優であり、時代物を得意として今に至るまで歌舞伎界に影響を残している初代吉右衛門の遺品の数々を展示している。舞台での衣装や鏡台、色紙や場面写真、俳句の軸、交友のあった高浜虚子からのはがきなど、貴重なものも多い。このほか、当時の後援会の雑誌、公演チラシ、浮世絵風の絵はがきなども並び、児玉教授の個人コレクションの数々が、当時の初代の人気ぶりを証明する。

 児玉教授は「江戸時代に生まれた歌舞伎の伝統を背負いつつも、近代人として現代につながる礎を築いた。そこに古典を重視する二代目の生き方も重なってくる。初代の業績を改めて認識してほしい」と語る。入場無料。8月2日午後2時からは、当代が出演する演劇講座が学内の大隈記念大講堂で開かれる。

(2011年7月25日 読売新聞)

長龍郎ら若手、魅力伝える公演 [舞台と伝統芸]

長唄三味線で歌舞伎の舞台などで活躍する今藤長龍郎(いまふじちょうたつろう)ら若手邦楽演奏家が、分かりやすくその魅力を伝える公演「はじめての邦楽」が30日、東京・三宅坂の国立劇場で開かれる。

 長龍郎は「邦楽の裾野を広げるきっかけになれば」と語る。(塩崎淳一郎)

 午後1時に始まる第1部は、義太夫節、新内節、長唄の三つの分野の語りや唄を聞き分けてもらう。女流義太夫の竹本越孝(こしこう)、新内剛士、東音(とうおん)味見純(あじみじゅん)らが出演する。

 長龍郎が出る午後4時の第2部は、邦楽器に焦点を絞った構成で、箏の遠藤千晶、囃子(はやし)の望月太三郎らが各自の楽器を奏でて邦楽の世界にいざなう。上演時間は約1時間で、案内役は歌舞伎俳優の尾上松也が務める。

 長龍郎は「三味線は3本しか弦がないのに、様々な音色を出し、曲の情景を浮かび上がらせるダイナミックさを持つ。世界の民族楽器の中でも洗練を極めた部類に入り、今なお進化中」と、魅力を語る。「つい最近まで日本人の身近にあった楽器で、DNAに染み込んでいる。その記憶を呼び起こしたい」

 持ち時間20分の中で三味線の説明を行い、戦後間もなく作曲された「流れ」を演奏し、名曲「勧進帳」の「滝流し」と呼ばれる高度な技巧を要する部分も弾く。「特に後者は、自然の滝の荒々しくも美しい光景を脳裏に浮かべてもらえるように」と気合が入る。

 かつては一般的な習い事だった邦楽。稽古する人が減り、先細りの邦楽の世界を深く憂う。「本来は三角形の形で、第一に多くの客層がいて、その上に稽古をする人がいて、頂点にプロがいるのが理想だが、今は逆三角形。これでは衰退するばかり」と長龍郎。「公演を契機に稽古をしてくれる人が出てほしい」

 かく言う長龍郎も、父母共に邦楽の世界にいたが、4歳でピアノを始め、作曲のコンクールに出品するなど、洋楽器に親しんだ。三味線の稽古を始めたのは10歳の時で、めきめき腕を上げ、今では長唄三味線の未来を担う俊英の一人。「ピアノを練習した影響で、邦楽の作曲も手がけるようになった。洋楽器と邦楽器は共存できる」と確信する。

 42歳の若さを武器に第一線で活躍中。将来の邦楽演奏者を増やすため、これからも地道に活動を続けたいと語る。(電)0570・07・9900。

(2011年7月25日 読売新聞)

<河村常雄の家元探訪>朝丘 雪路 [舞台と伝統芸]

若い人も日本舞踊に入りやすく

 日本舞踊・深水流家元の深水美智雪、すなわち歌手で女優の朝丘雪路は、昭和50年代に入ると日本画家だった父・伊東深水の名前にちなんだ舞踊リサイタル深水会を開いていた。

 56年に宇崎竜童のロックで踊った「曽根崎心中」が文化庁芸術祭賞大衆芸能部門の優秀賞を受賞。これが弾みとなって名古屋で舞踊教室を開くようになり、やがて東京での弟子も増える。60年に歌舞伎座で「深水流御披露目舞踊会」を開催するに至った。この舞踊会を深水流創流の起点としている。

――宇崎竜童さんのロックの「曽根崎心中」を使って踊ったのは。

 「ロックであろうとクラシックのシンフォニーであろうと、日本舞踊で踊れると思っていました。気持ちが入っていれば踊れると信じていたんです。私も歌手ですから。そして竜童さんの曲を踊り、しびれました。歌舞伎にもなっている題材をロックで踊ることができる。ものすごくうれしかったですね。日本舞踊をロックで踊るなんてと、批判的に見ていた方もいるかもしれませんが、私はワクワクしながら踊ったんですよ」

――そのころから深水流を興そうとしたのですか。

 「私はお師匠さんになろうと思ったことはなかった。弟子として、踊っていたかった。でもどうして家元になったかと聞かれると、踊りが好きだからと答えるでしょうね。流派なんて難しいことではなく、深水流と簡単にいっていろんなことができればいいなと思って始めたんです」

――初心者には稽古の前にロックで基礎舞踊をさせるそうですが。

 「チントンシャンから入ると、今の若い人は逃げ腰になる。ここは、日本のものなのに、と怒らないでロックで始めます。前とは生活が違いますから」

――月謝の額は東京、大阪など全国5か所の稽古場で統一し、時間が不規則になるタレントさんには切符制にするなどの制度を取り入れていますね。

 「若いお勤めの方が習いやすくするには、俳優志望の方にも日本舞踊を身につけていただくには、そして今のご時世、発表会に出やすくするにはどうすればいいか、周りの皆さんのお知恵を拝借しています」

――今年9月11日(日)には、東京・国立劇場大劇場で「創流二十五周年 第十三回深水流舞踊の会」を開きますね。

 「これまで歌舞伎座で開いてきました。昨年、25周年だったのですが、建て替えになりましたので今年、国立劇場で開くことにしました。本当は、東日本大震災で被災された方のことを思うと、開催はどうかなと思ったのですが、だからやろうよ、と決めたのです」

――デヴィ・スカルノ、深水雪志乃(五十嵐めぐみ)ら門弟約30人のほか、昼の部に幼なじみの花柳流家元・花柳壽輔、夜の部は歌舞伎の坂東玉三郎が特別出演する豪華版ですね。


 「大好きな芳次郎(現・壽輔)先生や詰め襟を着ていた学生時代から知っている玉三郎さんが快く出演してくださることになりました。私は大和楽の『あやめ』を踊らせていただきます。ハートが温まるような優しい曲です」

――この会をどのような会にできればと思っていますか。

 「今回は大震災のこともあって運営は大変。出演される皆さんも、大変な中で出てくれるのです。でもね、舞台に出て拍手をもらうとエネルギーになります。嫌なことが忘れられる、皆が元気になれる会にしたいですね」

――ありがとうございました。

 (写真は「粟餅」を踊る朝丘雪路)=「家元探訪」シリーズは今回で終了します。

(2011年7月27日 読売新聞)

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